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博士・ポスドクの『転職体験記』

オレゴン州弁護士、オレゴン州最高裁判所でのインターンを経て輸出比率の高い輸送機メーカーへ

Information
  • 転職体験記
    • 森本 淳史 氏 / 35歳
    • 公文国際学園高等部 卒
      University of Oregon 卒(B.A. Political Science/政治学学士号)
      Willamette University College of Law 卒(J.D./法学博士号)
      TOEIC 930点
      オレゴン州公証人資格
      オレゴン州弁護士資格

日本で高校卒業後、米国オレゴン州立大学に進学しました。元々法律に興味はあったのですが、米国では一般的に法学部がないので政治学を専攻していました。そこで米国法の起源や発展を知る機会があり、法律に魅力を感じて米国のロースクール(3年制のJ.D.)に行くことを決意しました。
「日本のロースクールに行こうとは思わなかったのか?」と聞かれる事が多いのですが、当時の日本ではロースクールが新設されたばかりで、しかも弁護士の就職難やロースクールの有効性等の話題が上っていた時期だったため、さほど魅力を感じていませんでした。また、進学先の政治学部には日本人がほぼおらず、同級生の大多数が米国のロースクールに進学する進路だったことも影響していたと思います。

米国のロースクールには二つのタイプの学生がいます。K through JDと呼ばれる大学卒業後すぐにロースクールへ進学するグループと、大学卒業後は仕事に就くグループです。私は米国、日本の両国間のビジネスの発展に貢献したいという想いがあったので、大学卒業後にまずは日本で仕事をする事にしました。その際の最大の懸念は「英語力の低下」でした。大学時代に夏休みの3か月間、日本へ帰っただけで英語力が低下したので「とにかく毎日英語を使う仕事」という事で、毎日ネイティブスピーカーと触れ合える英会話講師を選びました。企業研修や日常業務の中で色々な業界、ポジションの方々とお話する機会がふんだんにあり、日本のビジネスに対しての理解が深まったと思います。

米国のロースクールに進学した際も、常に「ビジネスの領域で仕事をする事」を念頭にキャリアプランを組み立てました。米国弁護士は非常に専門性が高いのですが、企業法務と一口にいっても、法律事務所やクライアントによって対象となる法律の種類は様々です。特にオレゴン州はファミリービジネスが多く、日本で一般的にいわれる企業法務のM&Aやコンプライアンスだけではなく、様々な分野への法務対応が求められます。そのため在学中はとにかく、どんな法律にも対応できる力を養うために、法律事務所ではなく裁判所でのインターンを選択しました。

ロースクールを卒業後、オレゴン州弁護士資格に登録をしました。本来であればすぐに就職活動をし、オレゴン州の弁護士事務所へ就職するはずでした。しかし、ロースクール卒業直前から始まったコロナ禍の影響によって、米国でも多くの弁護士事務所が雇用凍結をしてしまい、日本での就職も考慮する事となりました。「ゆくゆくは日本での就労を……」と、考えていましたが、直近で想定していた進路ではありませんでした。

学生ビザの一年間の延長許可が下りていたので、とりあえず米国・日本両方の可能性を視野に入れ、在学中に一年間インターンをしていたオレゴン州最高裁裁判長の下で、就職が決まるまで書記官をしていました。日本での就職となると、資格取得以降の実務経験が少ない私は外国弁護士登録ができない為、法律事務所での就職は難しいと考えました。しかしながら、法律事務所ではなく企業弁護士として働く事に葛藤もありました。
そんな中、米国を取り巻く政治・経済状況を考慮し、就労ビザ更新のタイミングで更新できないリスク、そして後々の日本での転職におけるリスクを熟慮した末、本来想定していたよりも早いタイミングで日本での就職に切り替えました。

オレゴン州最高裁には在学中、卒業後と合わせて約一年半書記官として在籍し、刑法から民法まで様々な事案を担当しました。
元々、『Law Review』というロースクールで刊行する学術論文の編集メンバーに選ばれていた事もあり、リーガルライティングには自信がありましたが、まずは徹底的にリーガルライティングのスキルを叩き込まれました。(このスキルが企業弁護士としてどの程度必要かはわかりませんが、弁護士としてはあった方がよいスキルのうちのひとつです。)
自信があったにも関わらず、一回目のドラフトは校正の赤ペンで真っ赤になっていて非常に落ち込みました。しばらく経って慣れてきた頃には、提案程度のコメントが書いてある時もありますが、なんとか求められるレベルでこなせる様になりました。オレゴン州最高裁にはレベルの高いリーガルライティングスキルのある方々が揃っているので、それぞれが書いた物を見せてもらい、各々の技をお互いに学びました。

アメリカの州最高裁の書記官の主な業務は、上訴審査摘要書の作成です。
上訴審査摘要書とは、控訴裁の判決に対する上訴に対し、控訴裁の判決、控訴裁の判決文、控訴裁における訴訟事件摘要書(appellate brief)を元に、裁判管轄権のチェック、裁量管轄権、法令・判例調査を元に上訴を受理するか棄却するかを精査し、裁判官に提出する上訴審査会議(petition review)で参考にする書類です。

米国の法律制度はコモンローのため、州最高裁は判例を通して法律の解釈や摘要範囲を決めていく立法機関としての機能があります。単純に結果が正しいか間違っているのか、ではなく、法律の意味・目的を理解し、それぞれの事案が新しい法解釈の前例として最適なものであるかを考えなければなりません。故に上訴審査摘要書の作成には、高いレベルで法律への理解が求められます。この業務を通して、リーガルライティングスキルはもちろん、判例調査の力、また幅広い分野の法律に対応していく力がつきました。

書類選考の段階で、上記のような自身の強みを履歴書と職務履歴書の中で企業にアピールしていくのは、私にとって非常に困難に感じました。私には日本で英会話講師としての就労経験はあるものの、実際に就職活動を経験したことがなく、右も左も分からない中でのスタートでした。当初はエージェントを通さず企業のホームページから個別に応募していましたが、すぐに効率が悪いと気付きました。それぞれの企業への応募にかかる時間もエントリーシート作成等でもかなり手間どりますし、そもそも、それぞれの企業の求めるスキル・人物像がよく分からないまま応募しなければなりません。

そこで様々な人材エージェントに登録をし、企業へ応募する効率は上がりましたが中々面接に結びつかず困っていました。原因としてはインターンに対する日米での違い等が、一律での選考に向いていなかったのではないかと考えます。(個人的に、米国でのインターンは実務経験とほぼ変わらず、学生でも実際に弁護士と同じ業務を監督下でこなします。)
そんな中、運良く(株)エリートネットワークの転職カウンセラーの篠原様とつながる事が出来ました。 

篠原様とお会いするまでエージェントとの面談といえば、大半は「履歴書の単純な確認程度の簡易的なもの」という認識でした。しかしながら篠原様の面談は非常にきめ細やかで、時間をかけて私の経験や希望をよく理解しようとしている、という印象を持ちました。また、フォローアップも丁寧で、ちょっとした質問にも快く対応して頂き、初めての就職活動でも不安なく活動することができました。

他エージェントとの違いを感じた点は、篠原様の担当する各企業への圧倒的な知識量です。面接対策のために企業を調べると、大抵は篠原様がおっしゃっていた内容と同じ、という事もよくありましたし、外部から調べても分からない細かい情報まで共有頂きました。また、篠原様はそれぞれの企業が求めるスキル・人物像をよく理解しておられ、面接対策をする上で参考となりました。 

私が就職先を探す中でこだわったのは、実務に占める海外法務の量でした。私の強みは米国法と英語力ですので、キャリアの中でそれらを活かしていくためにも、海外法務の多さは重要なポイントでした。知人から「海外法務があると聞いていたのに、入社してみたらなかった」ということを聞いたことがあり、慎重に精査しました。

私個人でチェックしていたのは、募集要項の中にあるTOEICの点数です。英会話講師の際にTOEICコースを担当していた事もあり、TOEICのスコアが実際の英語力とはかけ離れている事や、点数に応じたおおよその英語力も分かっていました。経験則として、たとえ英語がほとんど喋れなくても勉強の仕方さえ工夫すれば600点は超えられます。そのため、私が指標としていたのは800点です。ここまで行くとそれなりの英語力が求められると判断していました。

とはいえ、募集要項だけでは、なかなか確証が得られないのも事実でした。その際も篠原様からの企業情報(特に、それぞれの企業の方針等)がとても役に立ちました。これは篠原様が実際に各企業の人事担当者と直接話しているからこそ得られる情報だと思いました。
他のエージェントを通して面接をした際、私の希望している業務と全く違う事があったので、事前に企業の求人の詳細を知る事ができるのは非常にありがたく思いました。

篠原様のサポートにより、直接企業の方々とお話をする面接の場にて、調べてきた情報が正しいものか、実際にどんな人材を探しているのか、自身の希望に沿ったポジションなのか等を確認し、有効活用することができました。また、面接で人事担当の方から聞かれそうな事柄は事前にしっかりと確認することができたので、経歴や法律分野の再確認といった面接対策に集中することができました。仮に面接で伝え忘れたことがあっても、篠原様が面接終了後にすぐにサポートしてくださるので、不安なく面接に挑むことができました。
篠原様の助力のお陰で、実際に面接した企業はどれも私の希望に沿うものでした。

今回の就職活動の中でエージェントの重要性を再認識しました。特に私のように一風変わった職歴を持っている米国の弁護士の場合、履歴書と職務履歴書だけでは先方の企業に自身の良さを伝えるのはなかなか難しいと思います。また、王道といえるような職歴を持っている場合でも、自身の強み、ユニークさを書類のみで伝えるのはやはり難しいように感じます。そんなとき、篠原様のように応募する人間の事を深く理解し、企業に伝える事ができるエージェントは一般的には少なく、貴重であり、故に応募者の可能性を広げられるのではないかと思いました。 

今回採用に至った企業で、企業内弁護士として新しいキャリアのスタートとなりますが、これまで得た知識と経験を元に、弁護士として更なる成長を目指したいと思います。

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