博士・ポスドクの『転職体験記』
燃料電池の博士31歳。総合電機メーカーの本社研究所から、技術の社会実装にこだわり、国内最大手のエネルギー供給会社へ
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- 前職
- 【東証プライム上場 総合電機メーカー】
グリーントランスフォーメーション部門 アルカリ水電解/アニオン交換膜型水電解向け電極研究業務(本社の研究所)
- 現職
- 【東証プライム上場 国内最大手のエネルギー供給会社】
グリーントランスフォーメーション部門 水電解用CCM(触媒層付電解質膜)の商品化に向けた技術開発業務
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- 長井 真大 氏 / 31歳
- 東京都立高校 卒
国立大学 理学部 卒
国立大学大学院 化学科 修士課程 修了
国立大学大学院 応用化学科 博士課程 修了
工学博士
修士論文:燃料電池の高性能電極開発
博士論文:燃料電池の反応メカニズム解明
有機溶剤作業主任者
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者
大学院での研究テーマ:固体酸化物型燃料電池/水電解の研究
① 学生時代の志と、社会に貢献したいという想い
私がエネルギー関連の道を志したのは、大学時代に燃料電池の研究と出会ったことがきっかけです。特に、反応メカニズムの解明や高性能な電極開発などに携わる中で、エネルギーという社会インフラの根幹に関わる技術の力を実感しました。
当時はちょうど東日本大震災が起こった直後で、再生可能エネルギーや分散型エネルギーシステムへの関心が高まり始めた時期でもありました。社会全体が新たなエネルギーのあり方を模索する中で、自らが技術を通じて社会の変革に貢献できるのではないか——そう強く思うようになったのです。
博士課程まで進み、研究職としてアカデミアに残る道も一度は考えました。しかし、私自身が本当に成し遂げたいのは「技術を社会に実装すること」。研究成果を論文として残すだけでなく、それを実際に使える形で世の中に届けることが、自分にとっての社会貢献だと感じ、民間企業での研究開発職に進む決意をしました。
② 前職での研究開発と広がっていった視野
前職では、本社の研究所にて水電解技術の開発に従事しました。再エネ由来の水素製造技術は今後のカーボンニュートラル社会を実現するカギを握る分野であり、非常に意義深いテーマだと感じていました。
入社後しばらくは、会社員としての働き方や、業務として研究開発を行うという姿勢を身に付けることから始まりました。大学院での研究と異なり、スピード感やコスト意識、部門間の調整など「ビジネスとしての研究」に戸惑うことも多々ありましたが、1年ほどかけて徐々に適応していきました。
2年目以降は、技術開発と並行して海外市場に関するリサーチや顧客とのやりとりにも携わるようになり、視野が一気に広がりました。水電解市場は各社ともに競争が激しく、機密性も高いため、オープンな情報交換が難しい環境でしたが、展示会や現地の企業訪問を通じて、実際に人と会い、対話の中からニーズや技術動向を探っていくような活動も行いました。
このような経験を通じて、単に技術を深めるだけでなく、それをどう事業にしていくのか、どう世の中に広めていくのかという「事業開発的な視点」が非常に重要だと実感するようになりました。
③ 転職を決意した背景と葛藤
水電解という技術は、市場性も高く、世の中からの期待も非常に大きなものがありました。私自身も「この技術こそが社会を変える原動力になる」と信じて取り組んでいましたが、実際の事業化に向けたスピード感には、大きなギャップを感じるようになっていきました。
前職は多様な事業を抱える老舗の大手電機メーカーであり、優秀な技術者や多岐にわたる技術資産が集まっている一方で、投資判断が分散しがちで経営の意思決定に時間がかかるという側面もありました。社内でも水電解事業に対する関心は高いものの、実際の投資やリソース配分が伴わず、海外顧客からの期待にも十分には応え切れない状況が続いていました。
このままここで研究開発を続けていても、「技術を社会に実装する」という自分の理想には届かないのではないかという不安が、次第に大きくなっていったのです。
④ 転職活動で悩んだこと、譲れなかったこと
転職を決意するにあたり、最も悩んだのは「今このタイミングで技術職を離れるべきかどうか」という点でした。将来的には事業開発や新規事業企画にも携わりたいという思いがあり、まさにその岐路に立たされていたと感じます。
家族や信頼できる方々にも相談を重ね、最終的には、転職先の企業内で事業開発職へのジョブチェンジも可能な環境であることを確認した上で、今は技術職としてもう一段レベルアップする道を選びました。
こだわったポイントは、自身の専門性を活かせるかどうか、そして企業がその分野でどのようなポジションを取っているかという点でした。また、「技術が社会に届く可能性がどれだけあるか」という実装視点も重視しました。
逆に、勤務地や企業の規模といったこれまでこだわっていた要素については、ある程度柔軟に考えるようにしました。
⑤ 転職活動を通じての気づきと学び
今回の転職活動では、新卒の時とは異なり、「自分が何をしたいのか」「何ができるのか」ということをかなり明確に言語化する必要があると痛感しました。
企業側も専門性や実績に即した人材を求めているため、志望動機や職務経歴書は非常に重要でした。特に、これからやってみたいことを自分なりの根拠を持って説明できるようになるまでには、何度も書類を書き直し、自問自答を繰り返しました。
結果として、自分のキャリアを振り返り、自分の価値観やこれからのビジョンを深く考える、非常に良い機会となりました。同時に、エネルギーも使う活動であるため、私はあえて長期休暇に合わせてスケジューリングすることで、しっかり向き合える時間を確保するようにしました。
⑥ (株)エリートネットワークを利用して感じた安心感
ご担当いただいた転職カウンセラーの久井さんには、非常に丁寧にサポートしていただきました。
特にありがたかったのは、ご本人が化学系の修士であられたことから、最初の面談で私の専門性やキャリアの方向性をきちんと理解していただけた点です。ご紹介いただいた求人案件の中には、当初自分では考えていなかった業界や職種も含まれており、新しい可能性を広げるきっかけにもなりました。
また、書類作成に関するアドバイスも非常に的確で、応募企業の求人要件や期待する人物像に即して、私の実務経験をどう見せればよいかという観点で丁寧にフィードバックをいただけたことで、通過率も大きく向上したと思います。
各企業との調整や条件交渉など、自分一人では難しいやりとりもすべてご対応いただき、非常に心強かったです。
⑦ 転職先で目指すこと
転職先でも引き続き、水電解関連技術の開発に携わっていきます。今度こそ、技術を実際に世の中に届け、社会に実装するという目標を達成したいと考えています。
将来的には、研究開発の枠にとどまらず、事業開発や戦略立案など、より広い視点で技術と社会の橋渡しができるような存在になっていきたいと考えています。自分の技術が、誰かの暮らしや社会の構造そのものを変えていく——その瞬間を実現するために、引き続き邁進して参ります。
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