博士・ポスドクの『転職体験記』
カリフォルニア工科大学の未就労でR&D職へ
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- 前職
- 未就労(第三新卒)
- 現職
- 一部上場 機械・精密部品メーカー 研究開発部門 技術開発職
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- 藍 依翠 氏 / 28歳
- 私立 東京女学館高等学校 卒
慶應義塾大学 理工学部 物理情報工学科 卒
カリフォルニア工科大学大学院 応用物理学専攻 博士課程 修了(Ph.D.)
TOEFL iBT 110点
SolidWorks エキスパートユーザー(CSWE-MD)
大学院への進学
大学の時に交換留学を経験し、将来英語で研究をやっていける能力を身につけたいと考えました。授業料免除や給与有といった魅力からアメリカの大学院を志望し、非常にラッキーなことに指導教員の方々からのご助力もあってアメリカのPh.D.課程に進むことができました。
当時は大学院進学以外のオプションを考えなかったため、就職活動はしていませんでした。その時はまだ漠然と将来研究者になりたいと思っていました。
大学院で学んだスキル
Ph.D.課程では、量子情報通信に関わるデバイスの設計と作成をしていました。専門的スキルでは、ナノ微細加工や光学素子の構築を体得できました。実験データ採取のためのプログラムを書いたり、簡単なデータ処理をしたり基本的なプログラミングスキルも得られました。
アカデミアからインダストリーへ
元々教授になるつもりがなく、博士課程後期になって「国の研究機関や民間企業のR&Dポジションに行きたい」と考えるようになりました。
開発の視点で研究機関と民間企業を比べた時に、研究機関(アカデミア含む)は最も新しいアイディアの提案ができ、民間企業では新しいアイディアを使って効率よく商品化していくことに主力が置かれている、という違いを感じました。Ph.D.課程で論文をできるだけ早く発表することに圧力がかかっていた時、自分が最も気にしていたのは「新規性を示せたこと」よりも、「自分の測定やデバイス作成の効率が悪い場合、どのように改善すればいいか」でした。「こんな方法じゃ大量生産には向かないよな」と考える中で、民間企業の実際に商品化に直結するような研究開発のやり方に強い興味を持ち、民間企業に行きたいと考えるようになりました。
自分の卒業論文発表の目途が立ってから就職活動をやり始めたので、半年の間に就職先が決まらなければ学生ビザ(F-1 OPT)が失効するような状況でした。その時期は実験をまとめたり、卒論を書いたりで全く余裕がなく、発表後は燃え尽き症候群のようになっていました。
就職活動も自分の専門分野に近いところに応募しておくか、という全く具体性のない甘いアプローチで捗らずにいたところに新型コロナウイルスが流行し始めました。この時点で自分の専門分野に関係する量子、半導体、光学などの先端の研究を扱うポジションは、外国籍と聞いて即却下されることも多く、センシティブな領域であることに気づき、今のアプローチでは内定が決まる可能性が低いと感じました。コロナで帰国できずに不法滞在になるのは避けたかったので、早めにあきらめて日本に帰国しました。
専攻にこだわらずに就活
研究の忙しさを理由に就職活動をなかなか始められなかったのは大きな反省点でした。日本でも外国籍の人間なので、上記のこともあり専門分野から方向転換すべきだと考えました。
Ph.D./博士の最大の強みは得られた専門知識ではなく、専門知識を得るために鍛えられた自主性、独学能力や忍耐力だと信じています。なので、今までの研究の分野にこだわらず、研究開発系の仕事がやりたいという大まかな希望だけ持って就職活動を始めました。
転職エージェントを利用した就活
自分で一つずつ企業のウェブサイトなどを調べても、表面上、大同小異に見えました。同じ業界の似た企業を差別化できず、就職活動に自信を持てなかったので「プロの方の意見を聞きたい、そして自分に合いそうな企業を提案して頂きたい」と考え、エージェントさんを探すことにしました。(株)エリートネットワークさんのウェブサイトをたまたま発見し、“ポスドク”で転職なさった方も多数サポートされてきた実績を知り、試してみようと思いました。
担当してくださった転職カウンセラーの黒澤さんは、選考状況や面接について非常にこまめに(多い時は毎日数回)電話とEメールで連絡をくださり、エージェントとしての熱意を強く感じました。「こんなに時間を割いて頂いているのだから、自分も就職活動をがんばらなきゃ」という気持ちになりました。他社のエージェントさんに紹介して頂いた企業にも同時に応募をしていたのですが、掛け持ちしていることに関するコミュニケーションもスムーズで信頼できる方だと思いました。
しかし初めての日本での就職活動、第三新卒、しかもコロナ禍(2020年8月頃)ということで、そうそううまくはいかないだろうと腹をくくっていました。
すぐに良い結果が出ることをあまり期待していなかったおかげか、いくつもの書類選考を通過できなかったり、面接で失敗しても、前向きに次に行けたと思います。また、この頃は無職でしたので、時間とエネルギーに余裕がある状態で就職活動ができたことも、良いパフォーマンスにつながったと感じています。かなり内向的な自分にとって、コロナで1次面接がリモートであることもエネルギーを温存してすばやく次の面接の準備に切り替える点で助けになりました。
面接の準備では企業のIRレポートを参考に、企業のこれから発展させていきたい事業領域に関して「自分の●●の経験で貢献できる」というように、できるだけ具体的に志望動機を練っていきました。また、面接の心得のようなウェブページを見て、面接官は転職希望者の能力を見極めるために、どういった質問をするのかを考えるようにしました。質問の意図を汲み、ジャンル分けすることで、大まかに用意した解答を色々な質問にあてはめやすくなったと感じました。
そして、面接では今までの経験、能力に対して正直に正確に話すことを心掛けました。面接で失敗が続いた時には、黒澤さんから「元気にはきはきと、笑顔で面接に臨んでください!」と励ましの言葉を頂きました。面接の時に気づかないうちに無表情になってしまうことがあったのですが、その言葉を思い出して明るい表情を心掛けました。
感謝と意気込み
2020年11月1日付で希望通りの技術開発職で働き始めることが決まり、黒澤さんのサポートに深く感謝しております。本当にお世話になりました。
面接を通して業務に直接関連のある経験があまりないことが明らかになりましたが、人柄やアカデミアでの経歴などでこれから戦力となり得るポテンシャルがあると評価してくださった方々に感謝です。これまでに培った自主性と思考力を活かし、柔軟に問題解決に応用していける開発者として努力し、社会に貢献していきます。