博士・ポスドクの『転職体験記』
製薬メーカーの研究職(薬剤師)から、専門商社の法人営業へ
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- 前職
- 東証一部上場 大手製薬メーカー 研究開発職
- 現職
- 東証一部上場 老舗専門商社 法人営業職
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- 小出 淳 氏 / 33歳
- 東京大学 薬学部 薬学科 卒
東京大学大学院 薬学系研究科 分子薬学専攻 修士課程 修了
東京大学大学院 薬学系研究科 分子薬学専攻 博士課程 修了
薬剤師
危険物取扱者甲種
TOEIC 890点
私がなぜ前職を選んだかといえば、大学院で所属していた研究室のほとんどの人間が同じような進路を選んでいたため、私自身もまた、何の疑いも持たずにその道へ進むものだと思い込んでいたのでした。言い換えれば、周囲に流されてなんとなく研究職に就いてしまったのです。就職した会社の給与水準も業界内では良い方であったため、悪くない選択であったと当時は感じていました。
しかしその後、主力製品のシェアが落ちるにつれて会社の業績は悪化していきました。リストラや給与体系の変化が起こり、さらには政府の方針転換から業界全体に強い向かい風が吹くようになったことから、徐々に悲観的な空気が会社を覆っていくようになります。会社の行く末に対する嘆きが、日常的に聞こえるようになりました。
折しもそのとき友人の紹介でベンチャー企業の面接を受けることができたのですが、そこで芽生えたのは、自分の職場の研究水準が世界で戦えるレベルに達していないのではないか、という疑いでした。このまま今の職場にいることはできない、という思いが徐々に強くなっていきました。
とはいえ、他の業界を含めて転職先を探してはみたものの、そもそも自分の研究分野に対する需要がない。そんなときに見たのが、(株)エリートネットワークの広告でした。インターネットでの評判は一部良くないようにも見えましたが、他の大手転職サイトでは見ない求人が数件あったことに惹かれて職務経歴書を送りました。
転職するのであれば、少なくとも今のところは安定性や成長性がある会社を、というのが最低条件でした。それが叶うのであれば、一時的に給与が下がっても構わないと思っていましたし、必ずしも転職先は研究職でなくてもいいけれど、とはいえ自分のスキルをその他のどの職に活かせるのかについてはイメージを持てずにいました。そんな私の考えを転職カウンセラーの小中出さんは汲んでくださり、候補としてメーカーの研究職だけでなくコンサル、商社、金融などといった業種の求人案件を提案していただきました。正直に言えば、転職活動を続けていくうちに、中には無理矢理すぎないかと思える提案も増えていきましたが、逆に言えばそれだけ力を尽くしていただいたということでもあったのでしょう。その結果、これで駄目なら転職を諦めてもよいと思えるようにもなりました。
転職活動を始めていちばん困ったことは、なかなか書類選考が通らないという点でした。私の年齢が未経験の職種に転職するにはギリギリであったということもありますが、かなり精神的にはストレスになるので覚悟しておく必要があります。その他には、面接を何社か受けると有給休暇取得のペースが激しくなってしまう、ということももちろんありますが、それ以上に職場や職務から心がどんどん離れていってしまうという問題があります。現在の仕事において抱える困難を、転職すれば解決するものとして、いわば転職を逃げ道として捉えるようになってしまう。全く異なる職種を志望する場合は特に、この点にも気をつけていかなければならないと思います。
面接の準備としては、小中出さんから宿題として出されていた事前質問の回答を用意し、何を質問するかを考えておく、ということを各社について行いました。そこさえきちんとしておけば、あとはどの企業を受けるにしても大喜利みたいなものなので、面接のフィードバックを取り入れながら場馴れするしかないと思います。事前質問の回答の添削や、うまく書けないところについて的確にアドバイスをいただけた点については小中出さんに非常に感謝しています。
私はあまり面接が得意な方ではないのですが、落ちた面接で何がいけなかったのかを自分なりに考えてみると、根本的に私は自分に自信がないのだということに思い当たりました。自分を無価値だと思うから、自分の意見は聞く価値のないものだと思い込んでしまう。それを克服するために、自分は(名前は伏せますが)某女性芸能人であると暗示をかけ、彼女ならどう振る舞うかをトレースしていました。そうして面接を受けるようになってから、性格的なミスマッチで落とされることはなくなったので、若干のハッタリをかますのは重要なのでしょう。
最終的に内定をいただいたのは歴史ある専門商社でした。会社の状況が変化していたこともあり、内定を受諾するか最後まで悩みました。この年齢で未経験の職種、しかも自然科学を相手にする仕事から人間を相手にする仕事へと転換しているわけで、私の状況は背水の陣とも言えるものでしょう。もしかしたら私の選択は必ずしも正解ではないのかもしれません。ですが、それでも私の人生の中でおそらくはじめての能動的な選択として、これからは悔いのないものとなるように模索していかなければなりません。転職はゴールなのではなく、始まりに過ぎないのだということに、成功してやっと気付くことができたのでした。
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