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はじめに


一般社団法人産学協働イノベーション人材育成協議会 事業責任者 藤森 義弘氏によるC-ENGINEの概要とこれまでの成果についての発表の様子。

産学協働イノベーション人材育成協議会(以下、C-ENGINE)は、2012年に経済産業省における「中長期研究インターンシップ検討会」によりその創設の機運が高まり、2013年に経産省の中長期人材交流システム構築事業として採択、翌2014年に設立されました。現在は一般社団法人として独立し、産学間で連携して博士課程の大学院生に向けた研究インターンシップを推進しています。
2023年11月9日(木)、京都大学百周年時計台記念館(京都市左京区)にて、C-ENGINE設立10周年を記念して「C-ENGINE10年の振り返りと未来への挑戦」と題してシンポジウムが開催されました。

今回は、シンポジウムで行われた講演、並びにパネルディスカッションの様子をお届けします。

基調講演 「産学が連携して人材育成に取り組む意義」

講演者:一般社団法人産学協働イノベーション人材育成協議会 代表理事 國府 寛司(こくぶ ひろし)氏(京都大学理事・副学長)

基調講演は「産学が連携して人材育成に取り組む意義」をテーマに、C-ENGINE設立の背景や実績といったこれまでの軌跡、それにより見えてきた課題と新たな挑戦について述べられました。
設立以来、C-ENGINEが支援したインターンシップは累計で711件に上ります。その成果として、大学院生と企業を繋ぐプラットフォームとしての体制を整備できたこと、博士課程の学生に対するインターンシップへの理解の浸透、そして博士人材の有用性の社会的認識の向上の3点を挙げられ、C-ENGINEの躍進について言及されました。さらに今後の展開として、インターンシップを起点とした大学・企業間の共同研究といった、学生インターンシップに留まらないC-ENGINEの活動の拡がりの可能性についても語られました。

また、この10年で見えてきた課題について、博士後期課程(博士論文執筆と重なる年次)の参加が増えないことや指導教員の関与が希薄であること、受け入れ企業におけるモチベーションの変化を指摘した上で、今後は「新しい形のインターンシップ」を推進するとして、国内でも企業と指導教員との間だけでなく、大学内の研究促進の専門人材(URA: University Research Administrator)も含めた連携を強めていくことを強調されました。

講演「カナダの産業振興政策と産学による研究人材交流の取組」

講演者:ブリティッシュコロンビア州政府在日事務所 マネジング・ディレクター 徳永 陵氏

徳永氏による講演は、「カナダの産業振興政策と産学による研究人材交流の取組」と題し、C-ENGINEが2023年に国際インターンシップに関して基本合意を交わしたカナダのMitacs(マイタクス)* について、カナダの博士学生インターンシップの実状を踏まえて話されました。
C-ENGINEはMitacsとの提携を通じて、大学院生・ポスドクを対象とした日本・カナダ間の国際インターンシップ制度の構築を進めています。より活発な国際交流の実現とイノベーション創出のため、グローバルな産学間連携が重要であると示されました。

* Mitacsとは
カナダ国内外の高等教育・研究機関と産業界を繋げるインターンシップや研究パートナーシッププログラムを提供するNPO法人。カナダでは特に大学による産業人材の育成に強みがあり、GAFAを始めとしたグローバル企業や世界中の企業とのインターンシッププログラムが整備されています。また、こうした制度へのバックアップも充実しており、主要な大学には2〜3名、Mitacs全体では約100名のインターンシップ調整員がいるほどです。こうした産学間連携が充実している成果として、Mitacs出身のスタートアップ創業者も数多く輩出しています。

C-ENGINE研究インターンシップ参加学生 体験報告(2名)

C-ENGINEの活動の一環である、研究インターンシップに参加した2名の学生による報告が行われました。

・黄浩辰さん(京都大学大学院 工学研究科 マイクロエンジニアリング専攻 精密計測加工学研究室、研究テーマ:三次元の動的運動計測)
黄さんはTOPPANホールディングスにて3ヶ月間のインターンシップに参加。同社の研究開発拠点である総合研究所にてToFカメラという三次元情報が計測可能なカメラの開発に携わりました。
・菅野 颯人さん(京都大学 基礎物理学研究所、研究テーマ:素粒子論)
菅野さんはBIPROGY株式会社にて3ヵ月間のインターンシップに参加。自身の研究分野である量子論の知識を活かし、誤り耐性量子コンピュータの実現に向けた基礎理論の調査として、文献のレビューを行いました。

ご自身の研究内容、実際に参加したインターン部門と研究との関連性、インターンシップの成果について発表しました。その後、各受入企業の担当者よりコメントを頂きました。お二人ともご自身の分野とは異なる研究を行っている企業にてインターンシップを行いましたが、自分がこれまで培った専門的知見を活かすことができ、参加した意義があったと述べられました。

パネルディスカッション「C-ENGINEの未来への挑戦」


パネルディスカッションの様子。
ディスカッションはオンラインと対面両方のハイブリット形式で行われた。

ファシリテーター: 
山本佳世子様(日刊工業新聞社 論説委員)
パネリスト:
國府 寛司先生(京都大学理事・副学長)
徳永 陵様(ブリティッシュコロンビア州政府駐日事務所 マネジング・ディレクター)
高橋 真木子先生(金沢工業大学大学院 教授)
古藤 悟様(三菱電機株式会社 開発本部技術統轄)
吉田 智一様(シスメックス株式会社 取締役常務執行役員CTO)


パネルディスカッションでは、以下の討論テーマについて、パネリスト3名によるショートプレゼンテーション、並びにディスカッションが行われました。

<討論テーマ>
●C-ENGINEとMitacsの連携について
●新しいインターンシップの形とは
●大学と企業を繋ぐ仲介人材
●共同研究における知的財産について

これからの博士インターンシップ、企業側・大学側の仲介人材の育成と認知の向上、カナダのMitacsとの連携のあり方、更には新しい手法を取り入れていくにあたって新たに出てくる課題や展望について、熱い議論が交わされました。

おわりに

C-ENGINEの設立10周年を迎え、Mitacsとの連携も始まりました。
海外の事例を基に、日本の体制も今後発展し、様々な挑戦をしていく気概を感じさせる議論でした。
博士人材の産業界進出がますます活気づき、産業界でのイノベーション創出にも繋がると、大いに期待が膨らむシンポジウムでした。

※この記事の所属・役職・学年等は取材当時のものです。