データが語る博士・ポスドク
企業にも還元できる専門性
博士課程の大学院生というのは日本の人口においても極めて一握りであると言えますが、博士課程へ進学する学生は、2003年を境に年々減少傾向にあります。
博士課程への入学者数の推移を見ると、ピークであった2003年の博士課程入学者数18,232人に対し、2010年で16,471人、2022年には14,382人と下降を続けています。
しかし、こうした状況の中でも特に特筆すべきは、一度社会人を経験した後(もしくは社会人として働きながら)博士課程に入学する人、すなわち社会人学生の割合でしょう。
博士課程入学者数全体のうち、社会人が占める人数は2003年3,952人、2010年5,790人、2022年6,001人と増加の一途を辿っています。
すなわち、全体数が減少しているとはいえ、社会人が占める割合が20年の間で40%を超えたのは、注目に値します。
更に入学時の年齢別で入学者数の推移を見ると、その変化は更に顕著に見られます。
2003年から2022年までの約20年間において、2003年、2010年、2022年で定点的に計測すると、24歳で博士課程に入学した人数は3,445人→2,804人→2,467人に、25歳は2,945人→2,166人→2,099人と段階的に減少しています。
一方、30~34歳で入学した人数では、3,147人→3,131人→3,033人という変化が見られます。
24歳~25歳という、修士課程からストレートに博士課程に進学する最もボリュームの大きい年齢層はいずれも900~1,000人近い減少が見られる一方で、30~34歳の入学者数を見てみると、20年間でその差はほぼ変わらず、微減は見られるものの横ばいの推移を保っています。
このことから、修士課程から直接博士課程に進学するよりも、一度ビジネスの世界に身を置き、より専門性を高めてそのスキルを活かしたいと考える人が増えた可能性を指摘できるのではないでしょうか。
この傾向は、ビジネスの世界において、専門性が求められる傾向に変化しつつあるということも考えられるでしょう。
実際、社費留学制度や社会人博士養成支援等、社員に対して博士号やMBA(経営学修士)の学位取得を支援する制度を整えていることをアピールする企業も出てきており、企業側における博士人材に対する価値を見直す動向が見て取れます。
このような「社会人の再教育」に寛容な企業の増加は、高度人材育成、博士取得者の活躍の場の拡充に繋がるため、ひいては社会全体の知の活性化が期待できるでしょう。